内装や間取りよりも大事?家の断熱性とは
「間取りはこうして、外装はオシャレにして…」など、どのような家にするか考えるのは非常に楽しいものです。しかし、どれだけ気に入った外観や間取りでも、「冬が寒すぎる」「光熱費がかさむ」と感じるようであれば、住んでいるうちにストレスを感じるようになるかもしれません。家の室温や光熱費に影響を与える一つの要因が「断熱性」です。断熱性の高さにこだわれば、夏涼しく冬暖かい、そして、ガス代や電気代などの光熱費も節約できる注文住宅の実現につながります。
断熱性を高めることで得られるメリット
断熱材などを利用して、外と住宅との熱の移動を遮断することで、家の断熱性は高まります。高断熱性能にすることのメリットは、年間通じて住みやすい温度に保てるだけではありません。住宅全体の温度を一定に保つことで、部屋と浴室やトイレなどとの寒暖差から起きるヒートショックのリスクが軽減されます。また冷暖房効率が良くなり、電気やガスなど光熱費の節約にもつながるでしょう。さらに一定の断熱基準や設備を満たした住宅には補助金が出る可能性もあるのです。
断熱性能を示す「UA値」
断熱性能の高い住宅を購入したいと思ったときは、UA値という数値をチェックしましょう。
UA値は、住宅全体の熱が建物表面の「外皮」を介してどれぐらい逃げていくかを表す数値です。数値が小さいほど断熱性が高いと判断できます。
断熱性能の指標となる3つの基準
日本は地域によって気候が大きく異なるため、国は全国を8つの区分に分けてUA値の基準を定めています。同じ都道府県内でも区分が異なることもありますが、大まかに説明すると寒い北海道は1から2、暑い沖縄は8に該当します。
そして区分ごとに目指すべきUA値が定められた、3つの基準が「省エネ基準」、「ZEH基準」、「HEAT20基準」です。次項から解説していきましょう。
省エネ基準
まずは国によって定められている「省エネ基準」です。1980年に制定された「省エネ法」を背景として作られ、その後も改定に連動して省エネ基準も改定されてきました。2023年現在では「平成28年省エネ基準」が最も新しいものとなっています。
ZEH基準
CO2排出量削減の対策として国が設定し、推進しているのが「ZEH(ゼッチ)基準」です。
ZEH基準が目指すのは、住宅全体のエネルギー消費と太陽光発電などを用いて造り出したエネルギーを、差し引き0にすることです。ZEHにはUA値や一次エネルギー消費量などの4つの要件が設けられていますが、中でもUA値の基準は先述の省エネ基準よりも厳しいものとなっています。
HEAT20
HEAT20(ヒート20)は「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」という2009年に発足した組織の略称です。主に住まいの省エネ化を目的とし、断熱等の技術開発や啓蒙活動を行っています。そしてこの研究会が定めた断熱基準も同様に、HEAT20と呼びます。基準はZEH基準よりもさらに厳しい条件となっており、グレード別にG1からG3までの3段階が設定されています。
UA値の違いによる光熱費の削減額
ここからは先述の3つの基準を満たした住宅で、どれくらい電気料金の差が出るのか試算してみます。島根県松江市や安来市、鳥取県米子市や境港市の場合で見ていきましょう。
島根県や鳥取県の地域区分は?
島根県や鳥取県の気候は、地域によって傾向が異なります。日本海沿岸の地域であれば比較的気温変化が穏やかですが、中国山地周辺は気温変化が大きくなり、冬場は厳しい冷え込みになる地域もあります。よってUA値の区分も市町村によって4から6の異なる区分となり、日本海に面した島根県松江市や安来市、鳥取県米子市や境港市は6の区分です。
UA値の違いによる電気代のシミュレーション
それでは「平成28年省エネ基準」「ZEH基準」「HEAT20(G2)」のUA値によって、どれくらい電気料金に差が出るのか、「エネルギー消費性能計算プログラム住宅版」を使ってシミュレーションしていきましょう。なお、ここではUA値以外の条件は考慮せず、単純にUA値の違いだけで比較してみます。試算に際しての条件は以下の通りです。
・UA値はそれぞれ、区分6の「平成28年省エネ基準」「ZEH基準」「HEAT20(G2)」の数値である、0.87、0.6、0.46とする
・床面積や外皮面積はデフォルト値
・給湯設備はエコキュートを想定し、電気ヒートポンプ給湯器、ふろ給湯器(追焚あり)に変更
・照明はLED使用
・電気料金は中国電力、従量電灯Bプラン、300kWh超過の単価である1kWhあたり26.73円で計算
これにより算出された電気料金は以下の通りとなりました。